七ツ寺レジデントカンパニーのYKOダンスカンパニーが2回目のワークショップを10月20日(土)、21日(日)に開催した。20日(土)のワークショップの模様を以下にまとめる。
この日の参加者は3名と1回目のワークショップよりやや少なめだが、七ツ寺専属市民劇団員の鬼頭さんやアートセラピストの落合さん、パフォーマーの鳥羽さんと、全員が身体を使って表現するということに慣れているメンバーである。コミュニケーションの容易さが手伝ってか、明るい雰囲気で場は進んでいった。
前回と同じく自己紹介とストレッチが終わった後、全員で舞台を自由に歩き回ることが始まる。一旦停止し目を閉じ、鈴村が指定した人物がどこにいるか指し示したり、舞台上の空間の誰も気づかないであろうもの(変わった木目やペンキでムラになった部分など)を探し、それぞれで紹介していく。このように、楽しみながら舞台上の空間に自分を落とし込んでいった。
休憩を挟み、これも前回のワークショップから引き続きのお題である≪絵と体≫に入っていく。二人でペアになって紙に相手のイメージを絵にして描くのである。描く紙の大きさはA4サイズと少し小さめ。しかし、何枚でも描いて良い。マーカー、クレパス、色鉛筆で色彩を含めて描く。鈴村からの「出来るだけ抽象で、線ぽくならないよう、塗りと混ぜて」という指示に従いつつ、参加者に加えYKO杉町が入り、二組は迷うことなくすらすらと筆を進めていく。
そして30分ほどで絵が完成し、先に描いてもらった方がまず、見た絵から受けるイメージを元に身体を使って表現する。
「体中から触手が出てくるイメージ」で動きが少なく、ゆったりとしたダンスであったり、「止まれない、止まったら駄目だ」という観念に囚われ、舞台上を縦横無尽に走り回るという緊張感のあるダンスであったりとさまざまであった。
それぞれが踊った後にどのようなイメージで踊ったのかという感想や、絵を描いた本人は相手をどのようなイメージで描いたのかを、フィードバックする。それを受けて、再度踊りで表現する。
「絵を見て踊ると脳が働くため、“我を忘れて一心不乱に踊る”という感覚でなくなり、他人(見る人)を感じながら踊ることができた」という感想や、逆に「印象を受けて踊る分には頭は使わなかった」という感想もあり、さまざまであった。
フィードバックを挟む前では、自分の内に向けてのダンスで、閉鎖的な印象を持ったが、フィードバックの後では、鑑賞者に向けたパフォーマンスとしてすんなり観ることができ、安心して楽しむことができた。
このように、フィードバックを挟んだ前と後では、後のダンスのほうが格段に良くなっていることが見てとれた。
今回のワークショップを終え、落合さんは「セラピーとは心を“解放”するわけではなく、客観的に自分を見て言葉で他人とシェアすることである。このワークショップはセラピーと通じるものがあった」と感想を話していた。鈴村は、第一回は未経験者に体の本質を伝える場としてのワークショップであったが、今回は体に対する哲学をすでに持っている人たちがその先の領域に進む場所であったと話した。
参加者にとって、また鈴村自身にも新たな課題を含め、収穫の多いワークショップであったのではないでしょうか。
文責:七ツ寺共同スタジオスタッフ・麗子
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